2026年11月3日時点の公表値です。申請額が予算に達した時点で受付は終了します。
- 親のトイレに手すりを付けたい。介護保険でいくら戻るの?
- トイレの入口の段差をなくしたい。これも介護保険の対象?
- 和式のトイレを洋式に替えたい。対象になる?
- もう洋式だけれど、ウォシュレットつきの便器に替えたい。対象になる?
- 先に工事を頼んでしまった。今からでも間に合う?
- ケアマネジャーがいない。理由書は誰に書いてもらうの?
- 国の補助金と介護保険は、一緒に使えるの?
- 業者に「介護保険で全部出ますよ」と言われた。本当?
上記のような悩みに答えます。
介護のためのトイレリフォームは、手すりを付ける、段差をなくす、扉を引き戸にする、床を滑りにくくする、和式を洋式にする、という小さな工事の組み合わせです。迷いやすいのは、同じ「便器の交換」でも介護保険の対象になる場合とならない場合があること、工事を始めたあとでは申請が間に合わない場合があること、国の補助や減税とどう重なるかが一つの資料に書かれていないことです。メーカーやリフォーム会社の解説は「手すりが付けられます」で止まりがちなので、ここでは厚生労働省の通知の文、国土交通省の要件書、国税庁の資料の原文を読みながら、何が対象で何が対象外か、いくら戻り、どの順番で動けば損をしないかを整理しました。工事の費用の相場は家の造りで大きく変わるため、数字では書きません。
介護のトイレリフォームで戻るお金は、介護保険の住宅改修、国のみらいエコ住宅2026事業、減税の3つで、動く順番は事前の申請が要る介護保険が先です。要介護・要支援の認定を受けた人の家なら、手すり・段差の解消・床材・扉の取替え・洋式便器等への便器の取替えなどが、支給限度基準額20万円の範囲で原則9割(所得により8割・7割)戻ります。ただし、既に洋式の便器に洗浄機能などを付けるだけの工事や、水洗化の部分は対象外です。
介護保険の枠とは別に、窓の工事と組んで国の事業でいくら戻るかは、計算ツールで確かめられます。

2026年度の制度・2026年10月時点で確かめています
戻るお金は3つ。順番は介護保険が先

介護のトイレリフォームで戻るお金は、介護保険の住宅改修、国のみらいエコ住宅2026事業、所得税などの減税の3つです。三つは対象になる人も、手続きをする時期も、申請する人も違うので、順番を間違えると取り返せないお金が出ます。
介護保険が先になるのは、工事の前に市区町村へ申請する決まりだからです。国の事業は登録された事業者が申請し、窓などの断熱改修とセットでなければトイレの手すりだけでは申請できません。減税は工事が終わってから確定申告や市区町村への申告をする仕組みです(固定資産税の申告は工事完了から3か月以内)。国の事業も、工事請負契約を結ぶ前に工事へ着手すると補助対象になりません。介護保険はそのうえ市区町村への事前申請が先に要るので、介護保険から確かめるのが安全な順番です。
| 制度 | 使える人 | トイレで対象になる工事 | 手続きの時期 |
|---|---|---|---|
| 介護保険の住宅改修 | 要介護・要支援の認定を受けた人の家 | 手すり・段差の解消・床材・扉の取替え・洋式便器等への取替えなど | 工事の前に市区町村へ申請 |
| みらいエコ住宅2026事業 | 窓などの要件化工事をする家 | 手すりの設置・段差解消(節水型トイレは別の区分) | 登録事業者が申請 |
| 減税(所得税・固定資産税) | 50歳以上、認定を受けた人、65歳以上の親族と同居する人など | 便所の改良・手すり・段差・戸・滑りにくい床材 | 工事のあと |
たとえば、70代の親が要介護の認定を受けていて、夜中のトイレで立ち上がるのがつらくなってきた家なら、まず担当のケアマネジャーに「トイレに手すりと、入口の段差を何とかしたい」と話します。介護保険を使うかどうかを決めたあとに、業者から見積を取る、という流れです。業者に先に話を持ち込んで見積を取ってしまうと、あとから介護保険の書類に合わせて見積を作り直すことになりがちです。
編集部の整理では、最初にするのは業者選びではなく、親の認定の状況の確認と、ケアマネジャーへの相談です。認定がまだなら、市区町村の介護保険の窓口か地域包括支援センターで、認定の申請から始めます。トイレの工事全体の補助金は、こちらにまとめています。

トイレの手すり・段差・扉・床は対象か
トイレの手すりの取付け、入口や室内の段差の解消、引き戸への扉の取替え、床材の変更は、どれも介護保険の住宅改修の種類に名前があります(床材は通知の例が居室・浴室・通路面で、便所は書かれていないため、トイレの床だけの変更は市区町村に確かめます)。対象になるかどうかは、工事の名前ではなく、通知に書かれた中身に当たるかで決まります。
厚生労働省の資料では、住宅改修の種類は6つに決められています。手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替え、その他これらに付帯して必要となる住宅改修です。通知はこの6つを具体的に説明していて、トイレに関わる部分は次のとおりです。
| 工事 | 通知に書かれている内容 | トイレでの例 |
|---|---|---|
| 手すりの取付け | 廊下、便所、浴室、玄関などに、転倒予防や移動・移乗動作のために設置する。形状は二段式、縦付け、横付けなど適切なもの | 便器の横や前に、立ち座りのための手すりを付ける |
| 段差の解消 | 各室間の床の段差や傾斜を解消する。敷居を低くする、スロープを設置する工事など。動力で段差を解消する機器の設置は除く | トイレの入口の敷居を低くする |
| 床又は通路面の材料の変更 | 居室では畳から板製床材やビニル系床材への変更など。浴室では滑りにくい床材への変更 | トイレの床だけを替える場合は、通知の例に便所が書かれていないため工事の前に確かめる(便器の取替えに伴う床材の変更は付帯工事として書かれている) |
| 引き戸等への扉の取替え | 開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等に替える。扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置も含む | 内開きの扉を引き戸にする。ドアノブをレバー式に替える |
原文(介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて・老企第34号の住宅改修の部分。出典URLは契約の原文確認):手すりの取付け:住宅改修告示第一号に掲げる「手すりの取付け」とは、廊下、便所、浴室、玄関、玄関からの道路までの通路等に転倒予防若しくは移動又は移乗動作に資することを目的として設置するものである。手すりの形状は、二段式、縦付け、横付け等適切なものとする。なお、貸与告示第七項に掲げる「手すり」に該当するものは除かれる。段差の解消:住宅改修告示第二号に掲げる「段差の解消」とは、居室、廊下、便所、浴室、玄関等の各室間の床の段差及び玄関から道路までの通路等の段差又は傾斜を解消するための住宅改修をいい、具体的には、敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げ等が想定されるものである。ただし、貸与告示第八項に掲げる「スロープ」又は購入告示第三項第五号に掲げる「浴室内すのこ」を置くことによる段差の解消は除かれる。また、昇降機、リフト、段差解消機等動力により段差を解消する機器を設置する工事は除かれる。床又は通路面の材料の変更:住宅改修告示第三号に掲げる「滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更」とは、具体的には、居室においては畳敷から板製床材、ビニル系床材等への変更、浴室においては床材の滑りにくいものへの変更、通路面においては滑りにくい舗装材への変更等が想定されるものである。引き戸等への扉の取替え:住宅改修告示第四号に掲げる「引き戸等への扉の取替え」には、開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等に取り替えるといった扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置等も含まれる。ただし、引き戸等への扉の取替えにあわせて自動ドアとした場合は、自動ドアの動力部分の設置はこれに含まれず、動力部分の費用相当額は、法に基づく保険給付の対象とならないものである。
手すりで気をつけたいのは、貸与(レンタル)の対象になる手すりは住宅改修から除かれると書かれていることです。工事を伴わずに置くだけの手すりはレンタルの側で扱われる場合があるため、壁に取り付ける手すりにするのか、置くタイプにするのかで、使う制度が変わります。どちらが本人に合うかは、立ち座りの動作を見ているケアマネジャーや作業療法士に相談して決めるものです。
段差の解消では、動力で段差を解消する機器の設置が除かれています。トイレの入口の敷居を低くする工事は対象に当たりますが、置くだけのスロープや、昇降機のような機器は住宅改修ではありません。扉は、引き戸への取替えだけでなく、ドアノブの変更や戸車の設置まで含まれます。ただし、自動ドアにしたときの動力の部分は保険給付の対象になりません。
たとえば、トイレの内開きの扉を引き戸にして、入口の敷居も低くする場合は、扉の取替えと段差の解消の2つの種類にまたがります。見積では2つの行に分けてもらうと、どの工事がどの種類に当たるかをケアマネジャーが確かめやすくなります。
介護保険を使う工事の中で、トイレに限らず場所別の優先順位を考えたいときは、こちらの記事が役に立ちます。

便器の取替えで対象になる範囲

便器の取替えで介護保険の対象になるのは、和式便器を洋式便器に取り替える工事が中心です。暖房便座や洗浄機能が付いた洋式便器でも、和式からの取替えなら含まれますが、既に洋式の便器に洗浄機能などを付けるだけの工事は含まれません。
通知の文は、種類の名前よりずっと細かく書かれています。便器の取替えは「和式便器を洋式便器に取り替えや、既存の便器の位置や向きを変更する場合が一般的に想定される」とされ、そのうえで、腰掛便座の設置は除かれます。腰掛便座は福祉用具の購入の側に入る品物で、住宅改修とは別の枠で扱われるからです。さらに、非水洗の和式便器から水洗の洋式便器に替える場合は、水洗化の部分の費用は保険給付の対象になりません。
- 和式便器を洋式便器に取り替える
- 和式から、暖房便座・洗浄機能つきの洋式便器へ替える
- 既存の便器の位置や向きを変更する
- 既に洋式の便器に洗浄機能などを付ける
- 腰掛便座を置く
- 非水洗から水洗にする水洗化の部分
原文(老企第34号の住宅改修の部分。同文を厚生労働省の新旧対照PDFの(5)でも確認。出典URLは契約の原文確認):住宅改修告示第五号に掲げる「洋式便器等への便器の取替え」とは、和式便器を洋式便器に取り替えや、既存の便器の位置や向きを変更する場合が一般的に想定される。ただし、購入告示第一項に掲げる「腰掛便座」の設置は除かれる。また、和式便器から、曖房便座、洗浄機能等が付加されている洋式便器への取替えは含まれるが、既に洋式便器である場合のこれらの機能等の付加は含まれない。さらに、非水洗和式便器から水洗洋式便器又は簡易水洗洋式便器に取り替える場合は、当該工事のうち水洗化又は簡易水洗化の部分は含まれず、その費用相当額は法に基づく保険給付の対象とならないものである
この線引きの背景には、制度の趣旨があります。支給の取扱いを定めた厚生労働省の通知(老企第42号)には、住宅改修は被保険者の資産形成につながらないように、また住宅改修に制約を受ける賃貸住宅などに住む高齢者との均衡も考えて、手すりの取付けや床の段差の解消のような比較的小規模な工事に限った、という趣旨が書かれています。便器の「性能を上げる」工事より、「使えるようにする」工事が対象になる、と考えると覚えやすくなります。
ウォシュレットのような機能の付加を考えている人は、ここが一番の落とし穴です。たとえば、既に洋式のトイレに住んでいる親のために、温水洗浄機能のある便座に替える場合は、通知の文に照らすと「既に洋式便器である場合のこれらの機能等の付加」に当たります。便座だけを替える話は別の記事にまとめています。

一方で、既に洋式の便器から別の洋式の便器に取り替える工事が対象になるかどうかは、通知の文には書かれていません。座面の高さが合わないので便器ごと替えたい、というような場合は、工事の前にケアマネジャーに相談し、市区町村の介護保険の窓口へ確かめてください。
編集部の整理では、便器を替えたい理由が「和式で立ち座りができない」なら対象に当たる可能性が高く、「新しい機能が欲しい」なら対象外の側に寄ります。理由書に書く内容も、この違いが出ます。
工事に付いてくる下地や配管の扱い
手すりの下地の補強、便器の取替えに伴う給排水設備工事、床材の変更、扉の取替えに伴う壁や柱の改修は、付帯して必要な工事として通知に例が挙げられています。見積に別の行で出てきても、本体の工事に付帯して必要なものとして通知の例に当たれば、それだけで対象から外れることはありません。
通知には、手すり、段差の解消、床又は通路面の材料の変更、扉の取替え、便器の取替えのそれぞれに付帯して必要となる工事が例として挙げられています。手すりなら壁の下地補強、扉の取替えなら壁や柱の改修、便器の取替えなら給排水設備工事と床材の変更です。どれも、本体の工事をするために欠かせない工事で、これを理由に見積が高く見えても、全体の対象になるかを考えるときは本体とまとめて見ます。
| 本体の工事 | 付帯して必要になる工事の例 |
|---|---|
| 手すりの取付け | 手すりを取り付けるための壁の下地補強 |
| 床又は通路面の材料の変更 | 床材の変更のための下地の補修や根太の補強 |
| 扉の取替え | 扉の取替えに伴う壁又は柱の改修工事 |
| 便器の取替え | 便器の取替えに伴う給排水設備工事、便器の取替えに伴う床材の変更 |
ただし、水洗化または簡易水洗化に係る給排水設備工事は、付帯工事の例から除かれています。便器の取替えに伴う給排水設備工事は対象でも、非水洗のトイレを水洗にする工事の部分は対象外、ということです。この2つが見積の中で1行にまとめられていると、どこまでが対象なのかが読めなくなります。
原文(老企第34号の住宅改修の部分。出典URLは契約の原文確認):その他住宅改修告示第一号から第五号までに掲げる住宅改修に付帯して必要となる住宅改修としては、それぞれ以下のものが考えられる。手すりの取付け:手すりの取付けのための壁の下地補強。段差の解消:浴室の床の段差解消(浴室の床のかさ上げ)に伴う給排水設備工事、スロープの設置に伴う転落や脱輪防止を目的とする柵や立ち上がりの設置。床又は通路面の材料の変更:床材の変更のための下地の補修や根太の補強又は通路面の材料の変更のための路盤の整備。扉の取替え:扉の取替えに伴う壁又は柱の改修工事。便器の取替え:便器の取替えに伴う給排水設備工事(水洗化又は簡易水洗化に係るものを除く。)、便器の取替えに伴う床材の変更
たとえば、和式の便器を洋式に替えるときに、床の仕上げ材を張り替える必要がある場合は、便器の取替えに伴う床材の変更として、見積の中で便器の取替えとひとまとめに書かれていると、付帯工事かどうかがはっきりしません。便器本体の取替え、給排水の工事、床材の変更を分けて書いてもらい、ケアマネジャーに見せると確かめが早くなります。
付帯工事に当たるかどうかが曖昧な行は、自分で判断せず、工事の前に市区町村の介護保険の窓口に確かめます。トイレ全体の工事の範囲の決め方は、こちらにまとめています。

20万円の枠と自己負担の計算
介護保険の住宅改修費の支給限度基準額は20万円で、原則その9割の18万円が給付されます。所得に応じて、給付の割合は8割(上限16万円)または7割(上限14万円)になります。トイレの工事を何回に分けても、同じ20万円の枠の中で数えます。
20万円は、要支援・要介護の区分にかかわらず同じ額で、生涯の上限として決まっています。この枠はトイレだけのものではなく、玄関や浴室、廊下の工事とも分け合うので、トイレで使い切ると、あとで浴室の手すりに回す分がなくなります。限度額の範囲内であれば、複数回に分けて申請もできます。要介護状態区分が重くなって3段階上がったとき、または転居したときには、もう一度20万円までの枠が設定されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給限度基準額 | 20万円(要支援・要介護の区分にかかわらず定額) |
| 原則の給付 | 9割(上限18万円) |
| 所得に応じた給付 | 8割(上限16万円)・7割(上限14万円) |
| 枠が設定し直されるとき | 要介護状態区分が3段階上がったとき、転居したとき |
計算の例(相場ではなく、計算のしかたを見るための仮の金額):トイレの手すり、入口の段差、和式から洋式への便器の取替えを合わせて24万円かかった場合、給付の計算に使えるのは限度額の20万円までです。原則の9割なら給付は18万円で、自己負担は24万円から18万円を引いた6万円です。8割の人は給付が16万円、7割の人は14万円になります。トイレの手すりだけで10万円かかった場合は、原則の9割なら給付は9万円、自己負担は1万円で、枠は10万円分が残ります。
たとえば、トイレと浴室の両方に手伝いが要る家なら、20万円の使い道を先に決めておくのが大切です。転びやすさと毎日の動線の2つで、どこに先に枠を使うかを家族で話し合ってから、ケアマネジャーに相談します。トイレを先に直し、浴室は枠が残った範囲で後に回す、という分け方もできます。
給付の割合の判定や、実際にいくら払うことになるかは、本人の所得などで変わります。支払いの流れ(いったん全額を払うのか、自己負担分だけを払うのか)は市区町村の手引きで決まっているため、見積を取る前に、窓口かケアマネジャーに確かめてください。市区町村の独自の助成の探し方は、こちらにまとめています。

申請から支給までの順番
介護保険の住宅改修は、工事の前に市区町村へ申請するのが原則です。順番は、ケアマネジャーへの相談、理由書の作成、見積、市区町村への事前申請、工事、領収書などの提出で、申請より先に工事を始めないことが一番の決まりです。
厚生労働省の資料では、住宅改修を行う際は、必要な書類を添えて事前に市区町村へ申請書を出し、工事の完成後に領収書などを出すことで保険給付される、とされています。やむを得ない事情がある場合には工事の完成後の申請も可能と書かれていますが、それは例外です。先に工事をすると、やむを得ない事情に当たるかを市区町村が判断することになり、給付が受けられない場合があります。
- 1ケアマネジャーに相談する困っている動作と場所を伝える
- 2理由書を作ってもらう住宅改修が必要な理由をまとめる
- 3見積を取る複数の事業所の見積が促されている
- 4市区町村へ事前に申請する申請書・見積・理由書・完成予定が分かるもの
- 5工事をして、領収書などを出す工事の完成後に出して給付を受ける
事前の申請で出すのは、支給申請書、工事費の見積書、住宅改修が必要な理由書、改修後の完成予定の状態が分かるもの(日付入りの写真や住宅の間取り図など)の4つです。見積書は、複数の事業所からの見積の提出が促されています。理由書を作れるのは、介護支援専門員(ケアマネジャー)、地域包括支援センターの担当職員、作業療法士、福祉住環境コーディネーター検定試験2級以上の資格などを持つ人とされています。
担当のケアマネジャーがいない場合は、地域包括支援センターに連絡します。相談には、介護保険の被保険者証、トイレの間取りが分かるもの、トイレの写真、本人が困っている動作を書いた紙を持っていきます。聞くことは、この工事が住宅改修の対象に当たるか、申請してから着工できるまでの目安、支払いの方法の3つです。
たとえば、業者が「お見積りが出たので、来週から着工できます」と言ってきた場合でも、市区町村への事前申請が済んでいなければ着工の日は動かします。契約書にサインする前にケアマネジャーに見積を見せ、事前申請のあとに着工する日程にしてもらうよう、業者に伝えてください。
もうひとつ、認定を受けていない家では、介護保険の住宅改修は使えません。認定の申請から始める場合、結果が出るまでは時間がかかります。その間に工事を急ぐ事情があるなら、介護保険は使えない前提で、下に書く国の補助や減税を先に確かめます。
国の補助はトイレの手すりと段差で出るか

国のみらいエコ住宅2026事業には、トイレの手すりの設置が7,200円/戸、段差解消が8,400円/戸という補助額がありますが、窓などの要件化工事をした家に行う工事だけが対象です。手すりと段差だけでは申請できず、申請する補助額の合計が5万円以上(窓リノベなど他の構成事業の交付決定を受けている場合は2万円以上)であることも条件です。
この事業は、住宅の省エネ化を目的にした国土交通省の事業で、バリアフリー改修は追加の工事という位置づけです。手すりの設置は、便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関と、これらを結ぶ経路に取り付ける工事が対象です。段差解消も同じ範囲の床の段差を解消する工事で、浴室の出入口や上がりかまちでは段差を小さくする工事も含みます。補助額は、箇所数によらず、改修した工事の種類に応じた額です。
| 工事の種類 | 補助額 | 対象にならないもの |
|---|---|---|
| 手すりの設置 | 7,200円/戸 | 工事(ネジ等で取り付ける簡易なものを含む)を伴わない取付け |
| 段差解消 | 8,400円/戸 | 工事を伴わない踏み台・段差解消板・スロープ等の据え置き |
原文(みらいエコ住宅2026事業「交付申請等の要件について(リフォーム)」p.59 4-6。出典URLは契約の原文確認):下表を満たす工事を補助対象とし、補助額については箇所数によらず改修を行った補助対象工事の種類に応じた額とします。/手すりの設置:便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路に手すりを取り付ける工事。手すりの取付けに当たって工事(ネジ等で取り付ける簡易なものを含む)を伴わない手すりの取付けは含まれない。7,200円/戸/段差解消:便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路の床の段差を解消する工事。取付けに当たって工事を伴わない踏み台、段差解消板、スロープ等の据え置き等は含まれない。8,400円/戸計算の例:手すり7,200円と段差解消8,400円の2つだけの合計は15,600円で、下限の5万円はもちろん、他の構成事業の交付決定がある場合の下限2万円にも届きません。窓などの要件化工事とあわせて、補助額の合計が下限以上になるかで申請できるかが決まります。
つまり、トイレの手すりと段差だけをこの事業で申請することはできません。窓の断熱改修などを一緒にする計画があり、補助額の合計が下限に届くときに、手すりと段差が上乗せされる、という関係です。節水型トイレに替える場合は別の区分があり、補助額は種類ごとの額に台数を掛けて決まります。額は要件書の表で事業者に示してもらってください。国の事業全体の入口は、こちらの記事にまとめています。

介護保険との関係では、注意が要ります。要件書の併用の項には、補助対象が重複する国費が充当された補助事業との併用はできないとありますが、介護保険の住宅改修をそこに含むのかどうかは書かれていません。同じ手すりを介護保険と国の事業の両方で申請できるかは、資料の文からは分からないので、事業者と市区町村の介護保険の窓口の両方に、工事の前に確かめてください。確かめる前提として、手すりを介護保険の工事にするのか、国の事業の工事にするのかを、見積の行で分けておくと話が早くなります。
窓の工事と組んだときに国の補助でいくら戻るかは、こちらにまとめています。

出典:みらいエコ住宅2026事業「交付申請等の要件について(リフォーム)」/環境省「先進的窓リノベ2026事業の詳細」(併用する場合の他の構成事業)
減税は便所の改良が入るかで決まる
バリアフリー改修の減税には、所得税の控除と固定資産税の減額があります。所得税のほうでは、国税庁が「便所の改良」を具体的に定めていて、介護保険の対象とは範囲が少し違います。
所得税の控除(住宅特定改修特別税額控除)の対象になる人は、50歳以上の人、要介護または要支援の認定を受けている人、所得税法上の障害者である人、高齢者等である親族と同居を常況としている人のいずれかです。バリアフリー改修工事の標準的な費用の額(補助金等の交付を受ける場合はその額を引いた額)が50万円を超えることが条件で、確定申告で申告します。このほか、工事の日から6か月以内に居住の用に供していることや、改修後の床面積・合計所得金額の要件もあります。国税庁が定める工事の種類は、通路や出入口の幅の拡張、階段の勾配緩和、浴室の改良、便所の改良、手すりの取付け、床の段差解消、出入口の戸の改良、滑りにくい床材への取替えの8種類です。
原文(国税庁 No.1220「バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」。出典URLは契約の原文確認):(4)便所を改良する工事であって、次のいずれかに該当するもの イ 排泄またはその介助を容易に行うために便所の床面積を増加させる工事 ロ 便器を座便式のものに取り替える工事 ハ 座便式の便器の座高を高くする工事 (5)便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路に手すりを取り付ける工事 (6)便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路の床の段差を解消する工事 (7)出入口の戸を改良する工事であって、次のいずれかに該当するもの イ 開戸を引戸、折戸等に取り替える工事 ロ 開戸のドアノブをレバーハンドル等に取り替える工事 ハ 戸に戸車その他の戸の開閉を容易にする器具を設置する工事 (8)便所、浴室、脱衣室その他の居室及び玄関並びにこれらを結ぶ経路の床の材料を滑りにくいものに取り替える工事
介護保険の対象と並べると、違いが見えます。税の便所の改良には、便所の床面積を増やす工事と、座便式の便器の座高を高くする工事が入っています。この2つは、介護保険の6つの種類には名前がありません。反対に、税では「便器を座便式のものに取り替える工事」と書かれているだけで、暖房便座や洗浄機能の付加についての細かな線引きは、国税庁の文には出てきません。同じトイレの工事でも、介護保険で戻る工事と、税で控除の対象になる工事は、重なる部分とずれる部分があります。
固定資産税の減額は、新築から10年以上たった家で、補助金等を引いた額が50万円(税込)を超えるバリアフリー改修をしたときに、翌年度分の固定資産税が3分の1減る仕組みです。申告は工事の完了日から3か月以内に、固定資産税を担当する役所の窓口へします。必要な書類は自治体によって異なる場合があると資料に書かれているので、工事の前に窓口に確かめます。
たとえば、トイレだけの工事は、所得税の判定に使う標準的な費用の額(固定資産税は工事に要した費用から補助金等を引いた額)が50万円を超えないことがあります。その場合は、廊下や玄関の手すりなど、一緒に行うバリアフリー改修を足して合計で判定できないかを、見積の段階で考えます。ただし、要らない工事を足して50万円を超えるようにするのは順番が逆です。
介護保険の給付が、税の判定で引く「補助金等」に当たるかどうかは、国税庁の文には書かれていません。工事の前に、税務署か、建築士に増改築等工事証明書を依頼するときに確かめておくと、あとで困りません。減税の細かな計算は、こちらにまとめています。

出典:国税庁 No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)
見積は介護保険の分とそれ以外に分ける
見積は、「介護保険の6つの種類に当たる工事」「国の事業や減税で別に扱う工事」「それ以外の工事」に行を分けて書いてもらうと、いくら戻るかを家族で確かめられます。合計1行の見積では、どの工事がどの制度に当たるかが読めないからです。
介護保険の申請に添える見積書は、工事の中身が通知の種類に当たるかをケアマネジャーと市区町村が確かめるための書類です。トイレの工事一式という1行では、手すりの取付けと便器の取替えと床材の変更が混ざり、対象外の部分も含まれているかもしれません。複数の事業所から見積を取るよう促されているのも、同じ工事を比べて中身を確かめるためです。
- 手すり・段差の解消・床材・扉・便器の取替えが、別の行に分かれている
- 手すりは、取り付ける場所と、壁の下地補強が入っているかが書かれている
- 便器の取替えは、和式から洋式へ替えるのか、位置や向きを変えるのかが書かれている
- 温水洗浄便座など、洗浄機能の付加が別の行になっている
- 便器の取替えに伴う給排水設備工事と床材の変更が、行として見える
- 水洗化の工事が必要な場合は、その部分が別の行になっている
- 工事の日程が、介護保険の事前申請のあとになっている
たとえば、2社の見積がどちらも「トイレ改修工事一式」の1行だったら、行を分けて出し直してもらいます。出し直しを頼まれて嫌な顔をする会社は少ないですが、行ごとの金額を出さない会社は、制度の中身を確かめていない可能性があります。見積の頼み方と比べ方の基本は、こちらにまとめています。

業者に「介護保険で全部出ますよ」と言われたら、「どの行が、住宅改修のどの種類に当たるか」を行ごとに書いてもらうのが確かな確認方法です。書けない場合は、制度の対象を確かめていない可能性があります。
※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
ケアマネジャーに相談する段階で、介護保険の分とそれ以外の分を行ごとに分けた見積が1社しか無いと、中身を比べられません。分け方を同じにして頼んで、複数の会社の見積を並べてください。事前の申請が済むまでは、契約も着工もしないことが前提です。
補助金を使わない・急がないほうがいい場合
介護のトイレリフォームでは、制度を使うことにこだわると、工事が遅れたり、本人に合わない工事になったりする場面があります。次のような場合は、制度を使わない、または契約を急がない判断も選択肢です。
- 介護保険の事前申請の前に、「今すぐ着工しないと間に合わない」と急かされている場合
- 洗浄機能つきの便座や、既に洋式の便器の入れ替えが、対象に当たるかを確かめる前に契約しようとしている場合
- 国の補助や減税を受けるためだけに、予定していなかった窓の工事や、要らない工事を足そうとしている場合
- 本人の状態が変わりつつあり、トイレで20万円の枠を使い切ると、あとで本当に要る場所に枠が残らなくなりそうな場合
- 退院の直後などで、本人がどこで、どんな動作で困るかがまだ定まっていない場合
国の事業には予算があり、状況はページ上部の帯で確かめられますが、帯の数字を見て急ぐより先に、補助が受けられなかった場合にも納得できる工事かを、補助なしの金額で一度確かめます。介護保険の枠は、状態が落ち着く前に大きな工事で使い切るより、本当に困っている動作から順に使うほうが、結果的に長く役に立ちます。
反対に、急いだほうがいいのは、すでに転倒や、ヒヤッとする場面が起きているときです。その場合も、ケアマネジャーに急ぎであることを伝えて事前申請の段取りを早めてもらい、着工は申請のあとにする、という順番は崩さないのが安全です。
編集部の整理では、判断の順番は「本人が安全に使えるか」「その工事が本人の動作に合っているか」「そのうえで制度が使えるか」です。制度は3番目で、1番目と2番目を曲げてまで合わせるものではありません。
よくある質問
介護保険でトイレ改修の補助金はいくら戻りますか?
支給限度基準額は20万円で、原則その9割の18万円まで給付されます。所得に応じて8割(上限16万円)または7割(上限14万円)になります。要介護・要支援の認定を受けた人の家が対象で、トイレ以外の工事とも同じ枠を分け合います。
2026年度にトイレリフォームの補助金は出ますか?
介護のためのトイレの工事なら、介護保険の住宅改修が2026年度の制度でも使えます。国のみらいエコ住宅2026事業は、窓などの要件化工事とセットのときに手すりと段差解消が上乗せされ、節水型トイレは別の区分です。減税もあるので、3つの制度を順に確かめてください。
トイレの手すりだけでも介護保険を使えますか?
使えます。手すりの取付けは住宅改修の種類に名前があり、壁に取り付ける工事を伴う手すりが対象になります。工事を伴わない置くタイプの手すりは、レンタルの側で扱われる場合があります。どちらが本人に合うかは、ケアマネジャーや作業療法士に相談して決めてください。
ウォシュレットだけ付けたいのですが、対象になりますか?
和式から洗浄機能つきの洋式便器に替える場合は含まれますが、既に洋式の便器に洗浄機能などを付けるだけの工事は含まれない、と通知に書かれています。便座だけを替える工事は対象外の側に入ります。迷うときは、工事の前に市区町村の介護保険の窓口へ確かめてください。
先に工事をしてしまいました。今からでも申請できますか?
介護保険は工事の前に申請するのが原則で、やむを得ない事情がある場合だけ完成後の申請もできると書かれています。やむを得ない事情に当たるかは、市区町村が判断します。着工してしまっている場合は、すぐに市区町村の介護保険の窓口へ事情を伝えて確かめてください。
寝室の近くにトイレを増設する工事は対象ですか?
通知に書かれているのは、便器の取替えと、既存の便器の位置や向きの変更です。新しい場所にトイレを作る増設が対象に当たるかは、この資料には書かれていません。ケアマネジャーに相談し、市区町村の介護保険の窓口へ工事の前に確かめてください。
業者に「全部、介護保険で出ます」と言われました。本当ですか?
20万円の枠の範囲で、原則9割までしか給付されないため、全額が戻ることはありません。また、対象外の工事も混ざっているかもしれません。どの行がどの種類に当たるかを、見積に書いてもらって確かめてください。
見積を見る前のおさらい
- 戻るお金は、介護保険の住宅改修・国のみらいエコ住宅2026事業・減税の3つ。工事の前に申請が要る介護保険が先
- 介護保険の対象は6つの種類。トイレでは手すり・段差の解消・床材・扉の取替え・洋式便器等への便器の取替え・付帯工事が当たる
- 便器は、和式から洋式への取替えが中心。既に洋式への洗浄機能の付加、水洗化の部分、腰掛便座は対象外
- 支給限度基準額は20万円で、原則9割(所得により8割・7割)。枠は浴室や玄関と分け合う
- 順番は、ケアマネジャーに相談、理由書、見積、市区町村へ事前申請、工事、領収書などの提出
- 国の事業の手すり7,200円/戸・段差解消8,400円/戸は、窓などの要件化工事とセットで、補助額の合計が下限以上のときだけ。介護保険との重ね方は資料に書かれていない
- 減税は、所得税の「便所の改良」の中身が介護保険とずれる。補助金等を引いて50万円を超える工事が条件
- 見積は、介護保険の分とそれ以外の分に行を分けてもらう
介護のトイレリフォームは、家族の心配が先に立って「便器ごと全部」と考えやすい工事です。けれど、本人がどの動作で困っているかを書き出し、それに合う工事から順に、制度の対象かを確かめるほうが、枠も手元のお金も本当に要る工事に回せます。制度は工事を決めたあとで当てはめるもので、制度に合わせて工事を決めるものではない、という順番を、家族で共有しておくのがいちばん確かな進め方です。

