棟瓦の積み直し費用はいくら?|葺き直し・瓦のずれの直し方と見積の単価

庭のある住宅
補助金の予算はどれくらい残っているか
みらいエコ住宅2026事業(リフォーム)
12%

2026年11月3日時点の公表値です。申請額が予算に達した時点で受付は終了します。

  • 棟瓦の積み直しって、いくらかかるの?
  • 見積の「棟積み直し 1mあたり」の単価は、高いの?安いの?
  • 積み直し、葺き直し、葺き替えは、何が違うの?
  • 見積に「棟工事一式」としか書いていない
  • 点検に来た業者に「瓦がずれている」と言われた。本当に直す必要がある?
  • 漆喰を塗り直すだけで済ませられないの?
  • 部分の修理で済む?それとも屋根全体をやり直すべき?
  • 瓦の工事に使える補助金はある?

上記のような悩みに答えます。

棟瓦の積み直しや葺き直しは、瓦屋根ならではの工事で、同じ「棟を直す」でも、表面の漆喰だけを詰め直すのか、棟をいったん解体して積み直すのか、屋根面の瓦まで外して下地から直すのかで、金額が大きく変わります。検索すると屋根業者のページやAIの要約が1mあたりの単価を表にしてくれますが、その単価が誰の見積から出た数字で、何を含んでいるのかまでは書かれていません。そこで、工事の違いと費用の目安、見積の単価を数量とセットで確かめる方法という基本を押さえたうえで、旧来の棟と下地に留める棟の違い、ずれの原因ごとの直し方、部分か全面かの線引き、工事の記録の残し方まで、国土交通省が監修した改修費用のパンフレット、国土技術政策総合研究所の資料、公共建築工事標準仕様書、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの案内で確かめながら整理しました。

先に答え

棟瓦の積み直しは、棟の長さ(m)に棟の単価を掛けて見積もるのが基本で、葺き直しは屋根面積(㎡)に屋根面の単価を掛け、そこに棟を足して見積もります。見積が妥当かは、単価だけでなく、棟の長さと屋根の面積という数量、旧来どおり土と針金で積むのか、心材と金物とねじで下地に留めるのかという中身をそろえて比べると分かります。ずれや棟のうねりが屋根の広い範囲に及んでいれば全面の葺き直しや葺き替え、棟や軒先など一部なら部分の改修が目安です。みらいエコ住宅2026事業の補助対象工事の一覧に瓦の積み直しや葺き直しの項目は無く、古い瓦屋根の耐風改修には市区町村を通じた支援がある場合があります。

窓や天井の断熱を組んだ場合に国の事業でいくら戻るかは、補助金の計算ツールで確かめられます。

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2026年度の制度・2026年10月時点で確かめています

目次

積み直しと葺き直しは触る範囲が違う

庭のある住宅

瓦屋根の「直す」には、小さい順に、漆喰の詰め直し、棟の積み直し、瓦の締め直し、葺き直し、葺き替えがあります。見積の金額が業者ごとに大きく違うときは、たいてい、この中のどれを前提にしているかが違います。

瓦屋根のてっぺんの棟は、平らな屋根面とは別の部品でできています。和瓦の棟では、屋根面の瓦の上に葺土を置き、のし瓦という平たい瓦を何段か積み、いちばん上を冠瓦(丸い瓦)で押さえ、すき間の表面を漆喰で仕上げるつくりがよく見られます。漆喰がはがれて中の葺土が雨で流れると、のし瓦を支えるものがなくなって棟が波打ち、ずれていきます。表面の漆喰だけ直せば済むのか、棟の中まで崩れているのかで、工事の名前も金額も変わります。

瓦屋根の直し方は、触る範囲で5つに分かれる
  1. 1漆喰の詰め直し棟の表面だけ。中の葺土が残っているとき
  2. 2棟の積み直し棟をいったん解体し、葺土やのし瓦を積み直す
  3. 3瓦の締め直しずれた瓦を戻し、くぎやねじで下地に留め直す
  4. 4葺き直し屋根面の瓦を外して下地を直し、瓦を葺き戻す
  5. 5葺き替え瓦を撤去し、下地から新しい屋根材にする

葺き直しと葺き替えは、どちらも屋根面の瓦をいったん外し、防水紙や野地板といった下地を直す工事です。違いは外した瓦をどうするかで、葺き直しは状態のよい瓦を戻して使い、葺き替えは新しい瓦やほかの屋根材にします。瓦そのものは割れていなくても、下地が傷んでいたり、留め方が弱かったりすれば、瓦を戻す前提で下地と留め付けをやり直す、という考え方です。

たとえば、営業から「棟の漆喰がはがれているので積み直しが必要」と言われた場合、漆喰の詰め直しで足りるのか、棟の中の葺土まで流れて棟が波打っているのかを、写真で見せてもらうのが最初の確認です。漆喰がはがれているだけなら詰め直しの見積も1案もらう価値があり、棟が波打っているなら詰め直しでは中の崩れが残ります。

瓦とスレートで向く直し方の違いや、屋根修理全体の段階の考え方は、別の記事にまとめています。

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迷ったときの軸は「どこまで外すか」です。見積を受け取ったら、まず工事名の行を見て、この5つのどれなのかを確かめてから金額を比べてください。

棟の積み直しは棟の長さで見積もる

棟瓦の積み直しの費用は、棟の長さ(m)に1mあたりの単価を掛けて見積もるのが基本です。屋根の広さより、棟がどれだけ長いかで総額が決まります。

業者ごとの単価表はたくさんありますが、出典が業者自身なので、どんな棟を何件集めた数字なのかは分かりません。公的な目安として使えるのが、日本建築防災協会が国土交通省の監修で作った「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」というパンフレットです。地震で被害を受けた瓦屋根の改修の見積書を分析して、棟と屋根面の単価を出しています。

計算例

日本建築防災協会「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」(2021年3月発行・監修 国土交通省住宅局市街地建築課市街地住宅整備室。2026年10月19日に確認)。棟の改修・設置は約5,000〜7,000円/m(目安の中心は6,500円/m)。根拠は、令和元年山形県沖地震の瓦屋根の緊急支援事業での補助実績50件の見積書分析と、民間事業者等の情報。地域や業者によって見積書の様式や経費の考え方が違うので、あくまで目安とされている。税込・税抜の記載はない。

出典:日本建築防災協会「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」(国土交通省サイト掲載)

この目安は、被害を受けた屋根の改修という条件の数字で、数年前の資料でもあります。今の材料費や手間賃をそのまま表すものではないので、手元の見積が「桁違いに外れていないか」を確かめる物差しとして使います。また、この棟の単価は全面ふき替えの費目の1つである「棟の改修・設置」で、足場・撤去・処分は屋根面の㎡単価の側の費目に入っています。棟だけを積み直す工事の単価として示されたものではないので、足場などが別に加わる前提で、見積の棟の行と見比べます。

棟の単価を左右するのは、主に次の点です。

  • 棟の段数:のし瓦を何段積むか。段数が多いほど瓦も葺土も手間も増える
  • 棟の種類:屋根のてっぺんの大棟だけか、四隅に下りる隅棟もあるか
  • 留め方:土と針金で積むか、心材・金物・ねじで下地に留めるか
  • 材料:のし瓦や冠瓦を戻して使うか、割れた分を新しくするか
  • 鬼瓦:棟の端の鬼瓦を外して据え直すか、交換するか
  • 足場:棟だけの工事でも、足場を組むかどうか

たとえば、切妻屋根で大棟だけの家と、寄棟屋根で大棟に加えて隅棟が4本ある家では、同じ床面積でも棟の総延長がまったく違います。見積の「棟積み直し」の行に、何mと書かれているか、大棟と隅棟が分かれているかを見てください。長さの書かれていない「棟工事一式」は、単価が高いのか安いのかを確かめようがありません。

鬼瓦の修理だけの単価を示した公的な資料は見当たりませんでした。鬼瓦を据え直すのか交換するのかは、棟の行とは別の行で書いてもらうと比べやすくなります。漆喰の詰め直しや瓦1枚の差し替えの単価は、屋根修理全体の費用の記事でメーカーの目安を紹介しています。

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葺き直しの費用は屋根面と棟の足し算

電卓とペン

瓦屋根の葺き直しや葺き替えの費用は、屋根面積(㎡)に屋根面の単価を掛けたものと、棟の長さ(m)に棟の単価を掛けたものの足し算で考えると、見積の行と突き合わせやすくなります。屋根面と棟は、作業も材料も別物だからです。

同じパンフレットでは、全面のふき替えの目安を、この足し算の式と、費目ごとの単価で示しています。

計算例

日本建築防災協会「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」(2021年3月発行・国土交通省監修。2026年10月19日に確認)。工事費の目安=屋根面積(㎡)×屋根面工事単価+棟の長さ(m)×棟工事単価。屋根面工事単価は約13,000〜約23,000円/㎡(中心17,500円/㎡)、棟工事単価は約5,000〜約7,000円/m(中心6,500円/m)。屋根面積は、屋根の長辺×短辺×勾配の係数(一般的な勾配の4/10は1.1、それより急な勾配は1.2)で簡易に出す。計算例は屋根面積132㎡・棟の長さ12mで約240万円(おおよそ200万〜300万円)。

費目 単価の目安
足場・養生等 1,000〜1,500円/㎡
既存屋根の撤去 1,500〜2,000円/㎡
下地の改修(野地板) 1,200〜2,000円/㎡
防水シートの敷設 600〜1,200円/㎡
和瓦のふき替え 5,000〜10,000円/㎡
棟の改修・設置 5,000〜7,000円/m
処分費用 2,500〜4,500円/㎡
その他(上に含まれない費目や諸経費) 1,500〜2,000円/㎡

屋根面工事単価は棟以外の費目を足したもの。税込・税抜の記載はない。

出典:日本建築防災協会「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」(国土交通省サイト掲載)

瓦屋根の全面改修は、屋根面と棟の足し算で見る
屋根面積(㎡)×屋根面の単価+棟の長さ(m)×棟の単価

この表で分かるのは、屋根面の単価の中で、瓦を葺く手間と材料のほかに、足場、撤去、野地板、防水シート、処分が大きな割合を占めることです。パンフレットの費目は「和瓦ふき替え」で、既存の瓦を戻して使う場合の扱いは書かれていません。葺き直しで瓦を戻して使う場合も、瓦を外す、下地を直す、葺き戻す、棟を積むという作業は残ります。葺き直しの見積では、瓦の行が「既存瓦の再使用」なのか「新しい瓦」なのか、割れて足りない分の補充が何枚見込まれているのかを確かめてください。既存の瓦を戻す葺き直しの単価を公的に示した資料は見当たりませんでした。

たとえば、2社の葺き直しの見積が、片方は「屋根工事一式」、もう片方は撤去・野地板・防水シート・葺き戻し・棟・処分に分かれていたとします。後者なら、この表の費目と1行ずつ並べて、どの行が目安から大きく外れているかを見られます。前者には、同じ費目に分けて書き直してもらうよう頼みます。

足場は、棟だけの工事でも組むことが多く、外壁の工事と時期をそろえると1回で済みます。足場が安全のための措置として削りにくい理由は、屋根修理全体の費用の記事で整理しています。

見積の単価は数量とセットで確かめる

見積の単価が妥当かは、単価だけを見ても決められません。単価に掛けている数量(棟の何m、屋根の何㎡)が正しいか、その単価に何が含まれているかとセットで確かめて、はじめて高い安いが言えます。

単価が安く見えても、数量が多めに数えられていれば総額は高くなります。反対に、単価が高く見えても、心材や金物、足場、処分まで含んだ単価なら、ほかの見積より割安なこともあります。住宅リフォーム・紛争処理支援センターも、見積書のセルフチェックの要点として、工事箇所、数量、仕様、単価を確かめることを挙げています。

  • 棟:大棟と隅棟の長さが、それぞれ何mと書かれているか
  • 屋根面:面積が何㎡か、勾配を見込んだ面積か
  • 瓦:再使用か新品か、補充の枚数は何枚か
  • 留め方:心材・金物・ねじの有無が、品名や仕様で書かれているか
  • 別途の行:足場、処分、下地の補修が含まれているか、別途か

屋根の面積は、図面があれば業者に計算の根拠を聞けます。パンフレットの簡易な式では、上から見た屋根の縦横に勾配の係数を掛けています。

計算例

日本建築防災協会「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」(2026年10月19日に確認)。屋根面積(㎡)=屋根の長辺(m)×屋根の短辺(m)×勾配の係数。建物の長さに軒の出を足すと計算しやすい。一般的な勾配(4/10)は1.1、それ以上の急な勾配は1.2。

第三者に見てもらう方法もあります。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルでは、契約前のリフォームの見積書を送ると、建築士の相談員が電話で助言する見積チェックサービスを無料で行っています。

計算例

住宅リフォーム・紛争処理支援センター「リフォームの見積書に関する相談」(2026年10月19日に確認)。リフォーム見積チェックサービス(無料)。これから契約を予定している消費者が、契約前の見積書(1または2通。契約書は不可)を送ると、建築士の相談員が電話で助言する。価格は(一財)経済調査会「積算資料(ポケット版リフォーム編)」に掲載された価格の情報提供。ウェブ申込みでは、予約日時は登録時点から最短で14日後以降。事業者との交渉や責任の追及に使うことは目的としていない。業者とトラブルになっている場合や、維持・管理(メンテナンス等)などは利用できない。

出典:住宅リフォーム・紛争処理支援センター「リフォームの見積書に関する相談」/同「リフォーム見積書セルフチェックのポイント」

たとえば、訪問の業者から棟の積み直しの見積を受け取り、急いで決めてほしいと言われた場合でも、予約までに日数がかかることを考えると、見積の数量と仕様を書き出しておくだけで判断の材料が増えます。棟の長さと段数、留め方を書いたメモがあれば、別の業者にも同じ条件で見積を頼めます。同じ条件書で複数社に頼む方法は、別の記事にまとめています。

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リフォームの見積もりはどう取る?|見積書の見方・相見積の頼み方・補助金の欄 リフォームの見積もりは、概算・現地調査・本見積の順に進みます。相見積は同じ条件書を渡して頼み、見積書は「一式」と諸経費を分けて読みます。補助金を使うときに見積書へ書いてもらう型番・性能区分・サイズと還元方法まで整理しました。

単価の確かめ方は、公的な目安で桁を確かめ、数量と中身で差の理由を探し、迷ったら第三者に見てもらう、の順番です。

※この枠にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

手元の見積に棟の長さと段数、留め方まで書かれていて、公的な目安や住まいるダイヤルで確かめられたなら、見積を取り直す必要はありません。比べる相手が1社分しかなく、その単価が高いのか安いのかを決めきれないときは、同じ条件で屋根の業者に見積を出してもらうのが近道です。屋根・外壁の業者を複数紹介してもらえる無料のサービスもあるので、申し込む前に棟の長さ・段数・留め方を書いたメモを用意しておくと、届いた見積をそのまま並べられます。

ヌリカエで棟瓦の積み直しの見積を比べる

棟の積み直しは留め方で中身が変わる

同じ「棟の積み直し」でも、旧来どおり葺土と針金で積み直すのか、棟の中に心材を通して金物とねじで下地に留めるのかで、工事の中身と単価が変わります。地震や台風で棟が崩れにくいかどうかも、この違いで大きく変わります。

国土技術政策総合研究所は、地震の際に最も被害が多いのは和瓦を使った棟で、旧来の構法は土や針金状の結束線を使い、下地へ緊結していないため脱落しやすいと説明しています。一方、業界団体の「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」による構法は、ボルトや金具で下地に強く留めるため、脱落や飛散が起きにくいとしています。台風の被害を調べた国土交通省の検討会でも、棟の被害の割合は留め方で大きく違っていました。

計算例

国土交通省「令和元年房総半島台風を踏まえた建築物の強風対策の方向性」(令和2年7月13日・耐風TG。2026年10月19日に確認)。被害のあった屋根の8割は瓦屋根。部位ごとの被害の割合(むね)は、ガイドライン工法27%、非ガイドライン工法68%。旧来の告示基準で緊結の対象は、軒・けらば(端部から2枚までの瓦)とむね(1枚おきの瓦)で、平部は規定なし。ガイドライン工法は原則として全ての瓦を緊結し、むねはねじで緊結する。緊結の強度は、銅線・鉄線<くぎ<ねじ。令和4年1月1日から、ガイドライン工法を建築基準法の告示基準に位置付け、新築時の全ての建築物に義務付けた。

出典:国土交通省「令和元年房総半島台風を踏まえた建築物の強風対策の方向性」/国土交通省「令和元年房総半島台風を踏まえた建築物の強風対策」/国土技術政策総合研究所「屋根瓦を落とさない・飛ばさないための7つのQ&A」

下地に留める棟がどんなものかは、国の公共建築工事標準仕様書の粘土瓦葺の節が具体的です。事務庁舎などの公共建築向けの仕様なので住宅にそのまま当てはまるとは限りませんが、見積の品名を読む手がかりになります。

計算例

国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」13章4節 粘土瓦葺(2026年10月19日に確認)。棟補強用心材は、特記がなければ杉で幅40×高さ30mm以上、防腐処理をしたもの。棟補強の金物はステンレス製か溶融亜鉛めっき鋼製。緊結線は、被覆した径1.0mm以上の銅線か径0.9mm以上のステンレス製。7寸丸伏せ棟とF形冠瓦伏せ棟は、心材を取り付ける金物を1m以内の間隔で躯体か野地板に留め、冠瓦はパッキン付きステンレスねじで心材に留める。のし積みの棟は、のし瓦を緊結線で互いに緊結し、冠瓦は心材から出した緊結線かパッキン付きステンレスねじで留め、各段の葺土は雨水が入らないようにのし瓦の外面から30mm程度内側に納める。

出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」

ここで知っておきたいのは、新しい留め方の基準は新築に義務付けられたもので、既存の建物については、国土交通省の審議会資料(強風対策の案)で「既存不適格建築物の増改築時に、増改築部分以外の既存部分へは、新基準を基本的に遡及適用しない扱いとする」という方針が示されていることです。棟の積み直しや葺き直しがこの増改築に当たるかは資料に書かれていないため、積み直しの留め方に新基準が求められるのかは、見積の段階で業者に確かめます。そのうえで、旧来の積み方にするか、心材と金物で下地に留める積み方にするかを、施主と業者で決めることになります。国土技術政策総合研究所も、改修の契約前に、ガイドラインで設計・施工できるかを元請けの担当者に確かめるよう勧めています。

たとえば、2社の積み直しの見積で、A社は「棟積み直し(葺土・銅線)」、B社は「棟積み直し(心材・補強金物・ステンレスねじ)」と書いていたら、B社の単価が高いのは材料と手間が違うからです。同じ単価で比べるなら、A社にも心材と金物を使う案の単価を出してもらいます。棟の積み直しでは、品名の欄に「心材」「金物」「ねじ」の語があるかを確かめるのが、いちばん手早い確認です。

瓦のずれは原因で直し方が決まる

瓦のずれは、ずれた瓦を元に戻せば終わりとは限りません。ずれた原因が、瓦を留めていないことなのか、棟の葺土が流れたことなのか、下地が傷んだことなのかで、締め直しで足りるか、積み直しや葺き直しが要るかが変わります。

古い瓦屋根では、もともと全部の瓦が下地に留められていないことがあります。旧来の基準では、軒やけらばの端の瓦と棟の一部だけが留め付けの対象で、平らな屋根面の瓦には決まりがなかったからです。国土技術政策総合研究所は、棟の近くで短く切った半端瓦や、谷や隅棟の形に合わせて三角に切った勝手瓦を留めていないと、地震や台風で脱落することがあると説明しています。

  • 屋根面の瓦が数枚ずれている:瓦を戻し、くぎやねじで留め直す(締め直し)
  • 棟の近くの瓦がずれている:半端瓦の留め付けと、棟の状態をあわせて見る
  • 棟が波打ち、漆喰がはがれて土が見える:棟の積み直しを考える
  • 瓦がずり下がり、すき間から植物が生えている:葺土の流れや下地の傷みも疑う
  • 雨染みが出ている:瓦の下の防水紙や野地板まで見てもらう

国土交通省のチラシ「あなたの家の瓦、緊結されていますか?」でも、瓦のずれや浮き上がり、瓦がずり下がって葺土に植物が見える状態は、地上から確かめられる注意の印として挙げられています。屋根の状況を確かめるために自分で屋根に登らないこと、詳しく知りたいときは瓦工事業者に相談することも、同じチラシに書かれています。地上からの簡易な確認の項目は、屋根修理全体の費用の記事で紹介しています。

たとえば、台風のあとに屋根面の瓦が数枚ずれただけで、棟がまっすぐで雨染みもない家なら、締め直しと周りの瓦の留め付けの確認という小さな工事を、まず見積もってもらう余地があります。反対に、棟が波打ち、棟の近くの瓦も一緒にずれているなら、ずれた瓦だけを戻しても、支えている棟が崩れたままでは再びずれやすく、棟の積み直しとあわせて考えることになります。

「瓦がずれている」と訪問した業者に言われたときは、その場で屋根に上げず、地上から写真を撮って、別の業者にも見てもらうのが安全です。訪問業者への対応と火災保険の考え方は、依頼先の記事で整理しています。雨染みが出ているなら、雨漏りの原因の探し方の記事もあわせて見てください。

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部分で直すか全面で葺き直すかの線引き

部分の改修で済ませるか、屋根全体を葺き直すかは、傷みが屋根のどれだけの範囲に広がっているかで決めるのが目安です。傷みが一部なら部分の改修、屋根面の広い範囲や棟全体に及んでいれば全面の改修、という順番で考えます。

日本建築防災協会のパンフレットは、平部の半分以上で瓦のずれや割れがある、棟がうねっている、隅棟がずれているといった被害が広い範囲にわたる場合は、野地板や防水シートの取り替えから瓦の葺き直しと留め付けまでを全面で改修し、棟瓦や隅瓦、軒・けらばなど部分的な対応で済む場合は、該当する箇所を個別に部分改修するとしています。部分改修でも、足場などの費用がかかることがあると断っています。

部分の改修で済む屋根と、全面の改修を考える屋根
部分の改修で済みやすい

  • 傷みが棟や隅瓦、軒・けらばに限られる
  • 屋根面がまっすぐで、雨染みがない
  • ずれた瓦を戻して留め直せる
全面の改修を考える

  • 平部の半分以上で瓦のずれや割れがある
  • 棟がうねり、隅棟もずれている
  • 野地板や防水シートまで傷んでいる

出典:日本建築防災協会「瓦屋根の改修ってどのくらいかかるの?」(国土交通省サイト掲載)(表の各1行目はパンフレットの区分。2・3行目は編集部の整理)

部分改修を重ねるか、全面でやり直すかで迷うのは、部分改修のたびに足場代がかかり、棟だけを新しい留め方にしても、屋根面の瓦は旧来の留め方のまま残るからです。全面の葺き直しなら、屋根面の瓦も含めて下地に留め直せますが、総額は大きくなります。

たとえば、築年数がたった瓦屋根で、ここ数年のうちに棟の漆喰の補修と瓦の差し替えを繰り返しているなら、次の部分改修の見積と、全面の葺き直しの見積を同じ時期に並べてもらうと、今後の補修の回数と足場の回数まで含めて比べられます。反対に、棟の一部の崩れだけで、屋根面の瓦がそろっていて雨染みもない家なら、棟の積み直しだけで様子を見る判断も十分に成り立ちます。

編集部の整理では、部分か全面かは「傷みの範囲」「下地まで傷んでいるか」「今後また足場を組むことになるか」の3点で決めると、家族にも説明しやすくなります。

工事は写真の記録で確かめる

棟の中の心材や金物、瓦を留めたねじは、工事が終わると外からは見えません。屋根に登れない施主が工事の中身を確かめる方法は、工程ごとの写真と記録を残してもらうことです。

国土技術政策総合研究所は、屋根の施工状況を写真とともに記録シートに残してもらうよう、元請けの担当者に相談することを勧め、その記録シートの例を公開しています。項目は、下地、平部、大棟、隅棟、半端瓦、勝手瓦に分かれ、大棟と隅棟では、棟の瓦が補強金物やステンレスねじなどで下地に留められていることを確かめる、と書かれています。

  • 下地:防水紙の種類と、瓦の下に入った雨水が抜ける納まりの写真
  • 平部:瓦の種類と、瓦の留め付けの状況が分かる写真
  • 大棟・隅棟:使った材料と、棟が下地に留められている状況の写真
  • 半端瓦・勝手瓦:ステンレスねじなどで下地に留めた状況の写真
  • 撮影者・施工者の名前と日付

出典:国土技術政策総合研究所「瓦屋根施工状況記録シートの例」

この記録は、契約の前に頼んでおくのがこつです。工事が始まってからでは、棟を積み終えたあとに中を撮ることはできません。見積の段階で「この記録シートの項目で写真を残してもらえますか」と聞くと、業者がどの留め方を前提にしているかも同時に分かります。

追加の費用も、写真とセットで決めておきます。葺き直しで瓦を外したら野地板が傷んでいた、棟を解体したら中の木材が腐っていた、ということは起こりえます。住宅リフォーム・紛争処理支援センターは、追加工事が出た場合について事前に打ち合わせておくこと、見積書の金額は契約後には変えられないことを、見積書の確認の要点に挙げています。野地板を替えるときの単価、写真で説明してから進める手順を、見積書の備考に書いてもらってください。

工事を頼む相手の目安として、国土技術政策総合研究所は、かわらぶき技能士(厚生労働省の技能検定)、瓦屋根工事技士、瓦屋根診断技士といった資格を挙げ、ガイドラインの構法に通じた工事店を選ぶよう勧めています。資格の有無とあわせて、記録を残してくれるかを聞くと、業者の姿勢が見えてきます。

葺き直しの手続きと使える支援

葺き直しの規模によっては建築確認の手続きが要ることがあり、補助については、国の住宅省エネの事業より、市区町村を通じた耐風改修の支援があるかを確かめるほうが近道です。

建築確認は、野地板まで替えるかどうかで分かれます。国土交通省の資料では、屋根ふき材だけを替える改修は、野地板に手を加えない場合、大規模の修繕・模様替に当たらないものとして扱ってよいとされ、屋根を構成するすべての材を替え、その範囲が過半になると当たりうるとしています。

計算例

国土交通省「国土交通省からのお知らせ」2025年3月版(2026年10月19日に確認)。二階建ての木造戸建て等で行う大規模なリフォームのうち、2025年4月以降に工事に着手するものは、事前に建築確認の手続きが必要。屋根の全面的な改修等は該当し、屋根や壁の仕上げ材のみの改修等は該当しない。

瓦だけを外して戻す葺き直しと、野地板まで替える葺き直しでは扱いが変わりうるので、見積の段階で業者に確認申請が要るかを聞いてください。手続きと石綿の調査が費用をどう動かすかは、屋根修理全体の費用の記事で整理しています。

国の補助については、みらいエコ住宅2026事業の要件書にある補助対象工事の一覧(開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備、子育て対応改修、防災性向上改修、バリアフリー改修など)を見ても、瓦の積み直しや葺き直しという項目はありません。防災性向上改修は窓のガラス交換や外窓交換の工事で、屋根の瓦の工事ではありません。屋根に関係するのは、躯体の断熱改修の中の「屋根・天井の断熱改修」です。

しかも、みらいエコ住宅2026事業のリフォームで補助を受けるには、平成28年以前に新築された住宅であること、窓などの開口部の断熱改修を中心にした決められた組み合わせの要件化工事を行うこと(住宅の新築時期や窓の性能区分によって、躯体の断熱改修も要るかが変わります)、申請する補助額の合計が5万円以上であることがそろう必要があります。平成29年以降の住宅は、次世代省エネ基準を満たさないことが証明できる場合に、平成4年〜平成28年に新築された住宅として扱われます。交付申請の受付は2026年6月30日から予算の上限に達するまで(遅くとも2026年12月31日まで)で、申請するのは施主ではなく、契約した住宅事業者です。

一方、古い瓦屋根の耐風診断と耐風改修には、国の住宅・建築物安全ストック形成事業による支援の仕組みが、令和3年度の資料で紹介されています。日本建築防災協会のパンフレットでは、これは市区町村など地方公共団体を通じた間接補助とされ、国土交通省のチラシ「あなたの家の瓦、緊結されていますか?」(令和3年度予算の成立を前提としたもの)では、対象区域も決まっているとされています。今年度も実施されているか、住まいの市区町村が実施しているか、対象の区域に入るかは、市区町村の窓口と要綱で確かめます。

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出典:小樽市「大規模の修繕・模様替に係る取扱いについて」(国土交通省の技術的助言の参考資料)/国土交通省「国土交通省からのお知らせ」/みらいエコ住宅2026事業「交付申請等の要件について(リフォーム)」/みらいエコ住宅2026事業 公式サイト

補助金を使わない・急がないほうがいい場合

瓦の工事では、補助や支援を待つことや、使うために工事を足すことが、かえって損になる場面があります。次のような場合は、補助金を使わない、あるいは契約を急がない判断も選択肢です。

  • 棟が崩れかけている、雨染みが出ているのに、支援の受付や予算を待って直すのを先延ばしにする場合
  • 国の補助の対象にするためだけに、予定になかった窓や天井の断熱工事を足そうとしている場合
  • 耐風改修の支援を前提にしているのに、住まいの市区町村で実施しているか、対象の区域かを確かめていない場合
  • 棟の長さや留め方が書かれていない見積のまま、「今なら補助が使える」と契約を急かされている場合
  • 部分改修と全面の葺き直しのどちらにするか決めきれず、両方の見積と写真を比べていない場合

棟が崩れかけている屋根は、地震や強風で瓦が落ち、家族や通行人にけがをさせるおそれもあります。補助で戻る額より、遅れて広がる被害や工事のほうが大きくなりかねないので、崩れや雨漏りがあるなら応急の処置と見積を先に進めます。国の事業の受付は予算の上限に達するまでなので、予算の状況はページ上部の帯で確かめ、補助が受けられなかったときにも納得できる金額かを、補助なしの総額で一度確かめておくと安心です。

反対に、棟がまっすぐで瓦のずれもなく、訪問した業者に指摘されただけという家なら、急いで契約する理由は小さく、別の業者に見てもらい、第三者の見積チェックを使う時間があります。

判断の順番は「どこまで傷んでいるか」「どこまで外して、どう留めるか」「そのうえで使える支援があるか」です。支援は3番目で、1番目と2番目を曲げてまで合わせるものではありません。

よくある質問

鬼瓦だけの修理はいくらですか?

鬼瓦だけの修理の単価を示した公的な資料は見当たりませんでした。鬼瓦を据え直すのか交換するのか、棟の積み直しと一緒に行うのかで手間が変わるので、見積では棟の行と分けて書いてもらい、何をする金額なのかを確かめてください。

棟だけの工事でも足場は要りますか?

棟だけの工事でも、足場を組むことは多くあります。足場が要る理由と減らし方は、屋根修理全体の費用の記事で整理しています。日本建築防災協会のパンフレットも、部分改修でも足場などの費用がかかることがあると断っています。組まない提案なら、どうやって墜落を防ぐのかを聞いてから判断してください。

瓦の締め直しだけで、ずれは直りますか?

ずれた原因が瓦を留めていないことなら、瓦を戻して下地に留め直す締め直しで直ることがあります。棟の葺土が流れて棟が波打っている、下地が傷んで瓦がずり下がっているといった場合は、締め直しだけでは再びずれやすく、積み直しや葺き直しを考えます。

訪問業者に「棟が崩れかけている」と言われました。すぐ直すべきですか?

その場で屋根に上げたり契約したりせず、地上から写真を撮って、別の業者にも見てもらってください。本当に崩れかけているなら、別の業者も同じ場所を指摘するはずです。訪問販売で契約した場合は、クーリング・オフができる場合があります。

葺き直しに確認申請は要りますか?

瓦だけを外して戻す改修と、野地板まで替える改修では扱いが変わりうるので、見積の段階で業者に確認申請が要るかを聞いてください。

見積の単価を第三者に見てもらえますか?

住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルが、契約前の見積書を確認して電話で助言するリフォーム見積チェックサービスを無料で行っています。維持・管理(メンテナンス等)に当たるものは利用できないとされているため、棟の積み直しが対象になるかは、申込みの前に住まいるダイヤルに確かめてください。予約までに日数がかかるので、契約を考え始めた段階で申し込むと間に合いやすくなります。

見積を見る前のおさらい

  1. 瓦屋根の直し方は、漆喰の詰め直し・棟の積み直し・締め直し・葺き直し・葺き替えの5つ。見積の工事名でどれかを先に確かめる
  2. 棟の積み直しは、棟の長さ(m)×棟の単価で見積もる。公的な目安は国土交通省が監修したパンフレットにある
  3. 葺き直しや葺き替えは、屋根面積×屋根面の単価に棟を足して考える。瓦を再使用するか新品か、補充の枚数を確かめる
  4. 単価は、棟の長さ・屋根の面積という数量、留め方、別途の行とセットで比べる。迷ったら住まいるダイヤルの無料の見積チェックを使う
  5. 棟は、土と針金で積むか、心材・金物・ねじで下地に留めるかで中身が違う。改修の留め方は見積の段階で決める
  6. 瓦のずれは、留め付け・棟の葺土・下地のどれが原因かで、締め直しか積み直しか葺き直しかが決まる
  7. 傷みが一部なら部分の改修、平部の半分以上や棟のうねり、隅棟のずれなど広い範囲なら全面の改修を考える
  8. 棟の中や瓦の留め方は、工程ごとの写真と記録シートで確かめる。追加の費用の単価と手順も契約の前に決める
  9. 野地板まで替える葺き直しは確認申請が要ることがある。みらいエコ住宅2026事業の補助対象工事の一覧に瓦の項目は無く、耐風改修の支援は市区町村で確かめる
  10. 崩れや雨漏りがあるなら、支援を待たずに直すことを先に考える

棟瓦の積み直しや葺き直しは、工事が終わると中が見えなくなる工事です。だからこそ、総額の高い安いで決めるより、棟の長さと屋根の面積、何を外してどう留めるのかを紙の上で見えるようにしておくほうが、営業の言う金額を落ち着いて確かめられ、家族にも説明しやすくなります。公的な目安で桁を確かめ、数量と留め方で差の理由を探し、記録を残してもらう約束をしてから契約する。その順番で見積に向き合えば、次の地震や台風に備えた工事になっているかを、紙の上で確かめられます。

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この記事を書いた人

リフォーム補助金・見積の窓口編集部です。リフォームの補助金と見積りについて、法令や省庁・自治体の公式資料を原文で確かめ、確認日を添えてまとめています。

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